何度かブログ文中に書いていました、病院の仕事。ホスピタルアート。
いま私が住む金沢市にある石川県立中央病院のお仕事をしました。
このお仕事が私に依頼された流れも、不思議なご縁を感じるものでした。
数年前から、県庁内の「県立中央病院建設推進室」の方々が建て替えについて進めていた中で、小児科にアートを・・・という案が出ていたようですが、その頃は私はまだ神奈川県に住んでおり、そのことは知りませんでした。
そして、金沢にUターン移住する予定さえなかったのです。
ところが、2015年頭に母が亡くなり、空き家になった実家をどうしようか、、、というところからの急展開。
そして、2016年の2月末に引越してきて間もなく、推進室のMさんから連絡があったのです。
Mさんとは、高校が同じでしたが、同じクラスになったことがないため、お名前を知っていたくらいで、話したことはなかったのですが、Facebookで何年か前から繋がっていました。
県としては、石川県在住で小児科のアートワーク(絵、デザイン)を担当できる人を探していたということで、金沢美大卒業の絵本作家である私のことはいいなと思ってくださっていたようですが、残念ながら神奈川県在住ということで諦めていたとお話を聞きました。
ところが、ものすごくいいタイミングで私が引っ越してきたわけです。
このお仕事をするために、金沢に呼ばれたのか?と思うようなタイミングでした。
亡くなった母が、私をこのために金沢に来させたのではないかと、そんなことも思いました。
私も2012年に半年以上の闘病(3週間に1回の通院と投薬、検査、手術)をした時に、病院の中が心安らぐ場所である大切さを身を持って知りました。
私が通院していた病院(聖マリアンナ医科大学附属クリニック ブレストセンター)内には、岩合光昭さんの写真やダウン症、自閉症の方々が描いた素晴らしい作品、優しい色のタペストリーがたくさん飾ってあり、私はいつも元気をもらっていました。
そういう病院の中にいると、とてもほっとしたのです。
病院へ行くのが辛いと思ったことがほとんどありませんでした。
だから、絶対にホスピタルアートは必要!と思っていたのです。
そして、病気になった本人以上に、見守り、時には一緒に病院に付き添う家族は、本人と同じくらい、もしかしたら本人以上に不安や心配な気持ちをいつも抱えていると、闘病中に感じました。
小児科は、子供が病気で通院・入院するとき必ず付き添うであろうご家族の心も安らぐ場所でなくてはいけないと、思っていました。
そのために、私にできることがあるのなら、ぜひやりたいと思い、このお仕事を受けた次第です。
それが、2016年3月のことでした。
当初は小児外来、病棟のどちらも、私が普段仕事で描いているように紙に原画を描いたものを壁紙印刷する予定で進行しました。
ここに絵を入れたい、という部分(広範囲でした)の図面を手渡されました。
そして、設計会社の方々、建設会社の方々、壁紙印刷をする方々、、、関わる皆さんと何度にも渡る打ち合わせをし、全体のラフスケッチを提出したのは、2016年秋でした。
壁面、ドア表面の絵にはストーリーを感じさせるものを描きました。
その時のプレゼンに提出した、色付きラフの一部。
懐かしいなあ。
それに対してのお返事をいただき、2017年3月ごろには原画を全てアップする、そういう予定だったのですが、人生うまくいかないものです。
ここで大きな試練が私に与えられました。
諸事情により、壁紙印刷は出来なくなったと、年明けに県からお返事がきたのです。
振り出しに戻りました。
・四季によって絵が変わった方がいい。
・壁もドアも、アートワークは取り外し可能な施工方法をとりたい。
・いしかわ動物園にいる動物、のとじま水族館にいる魚や動物、白山 昆虫博物館にいる昆虫、これらをメインに描いて欲しい。
そのような課題が与えられました。
振り出しに戻って考え始めたのが、3月。
病院の完成時期は変わりませんから、それはそれは過酷な日々が始まりました。
アクリル板を使ったレリーフを立案し、そういうアートを小児科に施工している福岡の病院に視察にも行きました。
ひびのこづえさんのアートワークです。でもはるばる行ってよかった!
結局、レリーフ以外にも、私にとっては、初めてのことばかりの仕事となりました。
でも、完成した今、振り出しに戻ったアクシデントがあったおかげで、おもしろいものになったのではないかなと思っています。
与えられた条件の中で、どれだけおもしろいもの、子供たちが喜んでくれ、親御さんたちの心が安らぐものができるか、その課題をクリアするよう頑張ったことは、自分にとってもとても勉強になりました。
ここでは詳しく書けないような、いろんなことがありました。
悔しくて泣いたことも、先方に激怒したことも、怒りすぎて体調を崩したこともありました。
でも、「終わりよければすべてよし」。
この言葉で、前書きは締めくくろうと思います。
次は、実際に施工した写真を載せながら、小児外来、小児病棟のことを書いていきます。