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ミケちゃん その6
8月に入ってすぐのこと。
抜歯の予約をしたときに、「抜歯の前の1週間、抗生剤を飲ませましょう。もしかすると歯の奥が膿んでいるほどひどくなっている可能性があるので、少し炎症を抑えてから抜いた方がそのあとの治りが早いと思うのです」と言われた。
そして、お薬をもらいに行き、1週間1日1回、ごはんに混ぜて与えた。

すると、まだお薬を与えて2日しか経っていないのに、食べっぷりがよくなり、頻繁に部屋から出てくるようになり、「アオーッ」という叫びも少なくなってぐっすりと長く眠るようになった。
薬が効いてこうなったのであれば、ほんとにとても歯が痛かったのだろう。
抜歯すれば、もっと快適になるからね。


そして、抜歯をする日を迎えた。
当日は朝5時以降水以外の飲食は禁止。(全身麻酔を使うので)
抜歯は11時からだ。
夜寝る前のごはん以降ずっと食べないのもかわいそうだなと、5時前に起床。
アラームをセットしたが、そんなの必要なく、心配で心配で3時半から目が覚めていたわたし。




早朝ごはん食べたあとのミケちゃん。
このあとの運命をまだ何も知らず…。


抜歯は無事に成功。
11時に導入麻酔(麻酔前投与薬)をわたしたち飼い主の見ているところでしていただき、そのあと預けてから約1時間後、
「最初から抜く予定だった奥歯以外に、犬歯(牙)2本もとてもひどい状態だったので抜きました。歯石除去と歯の研磨、ポリッシングも終わりました。もう目を覚ましてぼーっとしている状態なので4時ごろ迎えに来て下さい。」と携帯電話に連絡があった。
ミケちゃんは健康とはいえもうすぐ13歳ということを考慮してくださり、強い麻酔ではなく、注射による鎮静剤を何本か使い短い時間で行なって下さったそう。拮抗剤(麻酔から目を覚ませるための薬)を注射してすぐに目を開けたらしい。

お迎えに行ったときはすでにケージの中で目をパッチリ開けていて、「ミケちゃん」と呼ぶと「にゃー」とお返事をした。
先生のお話によると、普通の、子猫の頃から家で育っているネコさんたちとは違っていたと。
鎮静剤を射っても、眠ってはいけないとがんばっている様子があったらしい。
そうだよね、外の世界で気を失ってしまったら最後だものね。
ミケちゃんがどんなふうに13年近くを過ごして来たか、また思い、ちょっと泣きそうになった。





抜歯した牙2本をもらってきたので、消毒したあと撮影。
奥歯は抜いた直後に、取ろうとしたらゴックンと飲み込んでしまったそう。
(前述のように、浅い眠りの麻酔をしたので、ノドを動かして飲み込むことができたそう)


わたしが以前親知らずを抜いたときは、もう痛くて痛くてしばらく痛み止めを飲んでいたものだが、ネコさんは強い。
とくに痛み止めは飲まず、その日は帰宅後じっと眠り、しかも夜中近くにはミルクやヨーグルトを舐めていた。




そして、翌日からは、ゆでたササミとゆで汁をフードプロセサーでガーッとやったペースト状のごはんを、たくさん食べた。


抜歯2日後…



復活。
「おなかすいたわよー」と鳴いた。


そして、謎の雄叫び「アォーッ」はまったくなくなった。
あまり鳴かなくなり、たまに鳴く時も若かったころのミケちゃんの「にゃ〜」に戻った。
もしかしたら、大きな声で鳴こうとしたとき、歯や歯茎が痛いのをかばった鳴き方が「アォーッ」だったのかもしれない。
痛くて思わず「痛ーい!」と叫んでいた時もあるだろう。
発声の仕方によって、力が入ったり舌がふれる場所って違うからね。
それも素人のただの予想で、真相はわからないけれど、とにかく辛いことがなくなったのは確かなようだ。




こんなにすやすやと眠るようになったのだから。

いったいいつから痛いのを我慢していたのだろうね。
外で毎日会っていても気付いてあげられなかった。ごめんね。

でも、家に迎える決心をしたのがいまでよかった。
もしかしたらこのまましばらく外で暮らしていたら、そのうち痛みをこらえて食べるのが限界になり、食べることをあきらめ、私のものとにも来なくなっていたかもしれない。
あぁ、ほんとによかった。


そして、牙を2本なくしたミケちゃんは、もうネズミやカエルを捕まえて食べて行く能力がなくなったということかもしれない。
それは外では生きていけない肉食動物になったということだ。お家のネコ。
責任を持って、最後まで我が家の家族としていっしょに暮らしていこうね。





それからミケちゃんは、とてもたくさん食べるようになり、少しふっくらとし、若かったころのミケちゃんに戻った。
そして、抜歯の1週間後のこと、朝から夜遅くまでわたしたち夫婦が家を空けた日、何かが変わった。
帰宅したら、ミケちゃんがリビングの方から玄関に歩いて来たのだ。
え?リビングにいたの?何があったの?



ミケちゃんの表情が、その日の朝までとちょっと違う。
おだやかな顔になっている。

もしや、3ニャンとネコ会議をしたのか?新ネコ歓迎会をしてもらったのか???


「ねえ、新ネコ歓迎会したの?」とニヤとチャイに聞いたところ、こんな顔をした。




これはしたね。間違いないね。


ネコにはネコの世界がある。
きっとたまにはニンゲンがいない時間があった方がいいのだな。


そのあとまたペットシッターさんにお世話を頼んで3日間家を空けたときも、何の問題もなく過ごしたようだ。
ミケちゃんはシッターさんにも「ごはんください」と鳴いたらしい。すっかりおうちのネコさんだ。





こんなふうに、普通にチャイやコビーがそばにいたり。




最近はキッチンまでごはんを食べに来ることもある。


少しずつ、少しずつ、ミケちゃんがちゃんとこの家に馴染んでいく様子を見るのがうれしい。
4ニャンとのやりとりを見ていると幸せだ。


そして、どうもミケちゃんが4ニャンの中で一番上の位になっているのでは?と思うことがある。
たぶんそう。




貫禄。
女王2代目、はたまた姐御(アネゴ)か。



きっと天国のルルさんも「アンタなら認めるわ。まかせたわよ」と言っていることだろう。




ね、ルルさん。
(初代女王。14歳になった日の写真)









(おわり)


*家族決定になったミケちゃんの様子は、引き続きこのブログやツイッター、フェイスブック、instagramに載せていくと思います。




 
| ミケちゃんが家族になるまで | 20:22 | - | - | pookmark |
ミケちゃん その5
ミケちゃんを迎えてから頻繁に聞く「アォーッ」という雄叫びの謎を抱えたまま1週間。
健康診断のために病院へ連れて行った。初めて車にも乗る。
ずっと鳴き、心臓はドクドクとなる。そうだよね、怖いよね。
車の中ではずっと撫でながら話しかけた。





診察中、全く鳴かず、抵抗もせず、ものすごくいい子にしていたミケちゃん。
さすがだ。「抵抗しても仕方ないわ」と受け入れたのだろう。肝が座っている。


口の中のチェック、血液検査、聴診器での診察、エコー検査が無事終了。
口の中がひどいことになっているとわかった。奥歯には大きな歯石がつき、歯茎は真っ赤だ。
「いずれこの歯は抜いた方がいいですね。歯石もとってきれいにしないと、口の中の細菌は内臓にも悪影響を与えますからね」といったことを言われた。人間と同じだ。口腔内細菌は病気の原因にもなる。
それから「そうとう痛いのではないかと思いますよ」とも。

そうか、「アォーッ」は歯、口の中が痛いという叫びなのかもしれない。
歯や歯茎が痛いのって辛いもの。ニンゲンだったらすぐに歯医者さんに行くと思う。
そういえば外の老猫さん(私が好きだった律儀なリチオくん)もごはんをひと口食べたとたんに「ギャーッ」と叫んで走り去ったことがあった。そのあと徐々に食べなくなり、来なくなった。
治療を受けられない外の猫さんたちは、歯が痛くて最後は食べることを止め、そのまま弱り死を迎える子も多いのかもしれない。


ミケちゃんの抜歯はいつにしようか、とりあえず血液検査の結果が全身麻酔をして問題ないものであれば考えよう…そう思いながら帰途についた。

そうそう、病院でミケちゃんと他の3ニャンたちの話をしていたら、ミケちゃんのことが気になって仕方ないニヤのことを「ニヤちゃんは事務局長ですね」と先生がおっしゃった。
まさにその通り。
その日からニヤを事務局長と呼ぶことにした。



事務用の黒い腕カバーをしてそうだ。


数日後、血液検査結果が出た。
ミケちゃんは何年か前に、オス猫さんに襲われて傷口が膿むほどの大怪我をしていたので、猫エイズが感染してキャリアになっている可能性についても覚悟していた。もし結果が陽性だった場合は、ニヤとチャイ、コビーに猫エイズワクチンを射てばミケちゃんを隔離しないでも一緒に暮らすことも可能ですよと、病院の先生からは提案していただいていた。
でも結果は陰性。白血病も陰性。あぁ、よかった!
胸をなで下ろす。
その他の数値もほとんど正常。内蔵に問題はないようだ。ただ、白血球数が異常に高く、何らかの細菌に感染しているとわかった。それが口の中の問題なのか、それ以外なのかははっきりとはわからないと。
全身麻酔をかけることができる体だとわかったので、できるだけ早く抜歯をした方がいいなと思ったが、その日をいつにするかまだ決めかねていた。

しかし、まだ口の中の問題は抱えたままだが、エイズと白血病が陰性だったので、晴れて3ニャンと柵なしで対面できる時が来た。
待ってましたと言わんばかりにミケちゃんのいる部屋へ入ってくるチャイとニヤ。



チャイとは鼻ツンしてご挨拶。おぉ、すばらしい。
でもニヤのことはちょっと警戒してるのだろうか、シャーッと威嚇。




「シャーッっていわれたぜ」
ニヤ、落ち込む。




でもその翌日、ミケちゃんがぼーっと眠そうにしているときにニヤが全く躊躇もせずに近づきペロペロと毛繕いをし始めた。
さすがだな、事務局長。

が、小心者のコビーは気になるけれど、近くまでは行けず…。
なかなか距離は縮まらない。





こうして少しずつ少しずつ、ミケちゃんはこの家と3ニャンに馴染んで行った。
ミケちゃんの部屋(私の仕事部屋)から時々出て来て探検もするように。




廊下まで出てくるようになり、



お腹がすくと、廊下を進んでリビングの手前で「おなかすいたのよ」と主張するようになり、




やがてはリビングまで。
やっぱり事務局長はほっとけない。ものすごい歓迎っぷり。



ほっとけない、



ほっとけない、





ちょっとストーカーっぽくもなってますが。
ミケちゃんはたぶん「うざいわ、アンタ」と思っていると思う。
(わたしだったらそう思う)





チャイがそばにいてもミケちゃんは爆睡をするようになり、証拠写真はないがコビーともご挨拶を交わした。

家や3ニャンに慣れて来たことだし、そろそろ抜歯に踏み切った方がいいかな。
ミケちゃんの様子を見ながら、そう決心をした。
8月に入ってすぐ、病院へ連絡をし、12日に抜歯をする予約を入れた。


(つづく)



 
| ミケちゃんが家族になるまで | 12:25 | - | - | pookmark |
ミケちゃん その4
ミケちゃんを迎え入れる前に、ミケちゃんがひとりになれる部屋を用意した。わたしの仕事部屋だ。
最近は仕事道具をリビングに運び、ベランダの花や小鳥レストランに来る小鳥たちを眺めながら描くことがほとんどなので、その部屋は本や画材、描いた絵の置き場として使われており、ほぼ物置きになっている。
ミケちゃんが落ち着いて過ごせるように、ベッドやタオル、猫用トイレ、爪とぎ…など準備しておいた。
全てがミケちゃんにとっては初めて見るものなのだろうな…と思いながら。




来てすぐには乗ろうとしなかったベッド。
3日目の夕方、座ってウトウトしているところを見た。
『何かしら、これ…』と乗ってみたら、フカフカして気持ちよかったのかもしれない。
ミケちゃんにとっては初めてのベッド。13年近く地面や屋根、車のボンネットの上が寝る場所だったのだものね。
それを考えながらこの様子を見たら、ちょっと泣きそうになった。





家に入り5日目。
寝そべったまま食べるとは、ずいぶん安心している。やはり大物。
外ではいつもまわりを警戒しながらいつでも逃げられるように腰上げたまま食べていた。
もう大丈夫、ここは安全な場所。

またしても泣きそうになる。




ミケちゃんが安心して寝ている様子を見たり、部屋の中でわたしにブラッシングされながら鳴らすノドのゴロゴロを聞いていると、12年外で接してきたいろんな思い出がよみがえり、今の光景にぐっときてしまう瞬間が何度もある。

数年前、ミケちゃんが半月以上来ないときがあり、毎日近所を探し回ったこともある。結局、いつもごはんを食べる駐車場から30メートルくらい離れた場所で見つけたが、ひどい風邪(たぶんウィルス性鼻気管炎)にかかり、鼻がグシュグシュで食べ物の匂いも嗅げない様子だった。具合が悪くてしばらく身を隠しじっとしていたのだと思う。他のネコに会わない安全な場所にいたのだろう。
しばらくはそこにごはんを運び、ミケちゃんはやがて元気になった。
そんなこともあったなあと思い出したりした。
変な例えだが、12年越しの禁断の恋が実ったような、そんな気持ちである。


その一方で、ミケちゃんと会っていた駐車場を見たり通るときに、『あれ、ミケちゃんがいない』と思ってしまう。家にいるのだから当たり前なのだけど。
その感覚がなくなるまでには、半月以上がかかった。12年間以上の習慣だったのだから、仕方がない。




(マンション敷地内から見た駐車場。ミケちゃんと会っていた場所。)


さて、話は部屋のことに戻って。。。。
ドアの外側には、前もって購入したペットゲートを設置。高さも結構あるので、猫も飛び越えない…と商品説明に書いてあった。
いきなり3ニャンに会わせるのはどちらにとってもストレスだろうし、ミケちゃんを病院に連れて行き、猫白血病と猫エイズの検査を受けるまでは3ニャンに接触させるわけにはいかない。
ニヤを保護したときや、チャイとコビーを譲り受けたときは、子猫だったのでケージにしばらく入ってもらったが、13年近く外で暮らしていた立派な熟女をケージに閉じ込めるのはあまりにもかわいそうだ。
それで個室にゲート。VIP待遇だ。

ミケちゃんが来て2日間はドアも閉め、3日目から昼間はドアを開けてゲート越しに3ニャンと対面できるようにした。




みんな気になってしかたない。

『このおばちゃん、ここに住むのかなあ』
『なんだか強そうだぜ』
『ルルさんよりはこわくなさそうだけどね』
3ニャンの間ではこんな会話がなされていたのだろうか。
ミケちゃんはきっと、『なんだかうるさいのが3匹もいるわ。ま、みんな大したことなさそうだけどね』などと思っていたに違いない。




(近づき過ぎてシャーッと威嚇されたチャイ)


ミケちゃんを迎える準備は完璧!と思っていたが、落ち度があった。ゲートの1箇所、棒と棒の間隔が少し広めの場所がある。でも猫は通れないだろ…と高をくくっていたら…





やってくれました、ニヤ。
入りたい気持ちを抑えきれず、頭突っ込んだけど肩甲骨でつかえ、身動きが取れなくなった。アホだな〜。
(写真撮ってすぐ救出しました)


こうしてネコ同士はお互いの存在を気にしながら、ニンゲンのわたしはミケちゃんを観察しながら毎日を過ごした。
ミケちゃんはやはり、外にいる時から気になっていた涙と目ヤニがひどいまま。鼻もつまりぎみで、ごはんを食べた後涙がたくさん出ている。そして、寝起きやなんでもない普段、食べている最中に「アォーッ」という謎の雄叫びをあげる。
不安なの?外に帰りたいの?
猫語の通訳がいて欲しいとこれほど思ったことはない。


その謎をかかえて1週間が経った。


(つづく)


 
| ミケちゃんが家族になるまで | 21:05 | - | - | pookmark |
ミケちゃん その3
梅雨入りしたころ、ミケちゃんを家に上げることを決め、次は決行する時期を考えた。

引越しをするのは来年に入ってからの予定だが、いまの家で私たちニンゲンふたりと3ニャンとも、ある程度信頼関係を築いてからの方が、遠方への移動のストレスもいくらか軽減されるかもしれない。
そして、万が一ミケちゃんがどうしても外に戻りたそうにしたときに、引っ越してからでは全く知らない土地に放すことになってしまうから、それはできない。
じゃあ、もうできるだけ早いほうがいい。
そう決心がついた。




(2014年11月 撮影)


まずミケちゃんを家に上げる前にしなければならないことがある。
ずっと外で暮らしていたミケちゃんにノミやダニがいてもおかしくない。お腹に回虫もいるかもしれない。
それらを駆除してからでないと、我が家の3ニャンにも寄生し、たいへんなことになる。ニンゲンにも被害が及ぶ。
そこで、ミケちゃんを家にあげようと思っていることを我が家の3ニャンの主治医に相談した。
ノミの成虫、回虫を駆除し、ノミの幼虫や卵にも効果がある、リボリューションというお薬を使いましょうと提案していただいた。

その薬は液体を首の後ろ辺りに垂らす投薬方法なので、つけた後雨が降って体が濡れてしまったら効果は薄れるだろう。
だったら、いつ雨が降るかわからない梅雨の間はやめた方がいいのかな…梅雨が明けるのを待った方がいいのかな。
そんなことを思いながら、毎晩ミケちゃんに接し、まだいつにするか迷っていた。

不思議なもので、『ミケちゃんを家にあげよう』と決めてからは、毎夜ごはんをあげに行くときの気持ちに変化があった。
「ちゃんと今日も来るかな。事故にあったりしてないかな、元気でいるかな…」
もう心配で心配でたまらないのだ。
『この子は家には上げられない』と、あまり情が移らないようにするために作っていた心の中の壁のようなものが、なくなったのだと思う。
「ねえミケちゃん、うちに来てね。うちの子になってね」と、毎晩話しかけると、わかってるのか偶然なのか、「にゃ〜」とお返事をしてくれた。




(2012年11月 夫が撮影)



7月10日、まだ梅雨明けはしていなかったが、天気予報ではこのあと1週間くらい晴れだと言っていた。
よし、レボリューション(駆虫薬)を買いに行こう。そう決めて病院へ買いに行った。薬についての説明を受け、つけた後1週間くらいしてから家に入れた方が確実ですよと教えていただく。
じゃあ、今夜薬をつけたとして、連れてくるのは17日くらいだな。。。よし、決行!
その夜、ごはんを食べているミケちゃんの首に、薬をつけた。

それからは毎日、いつも以上にミケちゃんを注意深く観察した。
すると、両目からたくさんの涙を流していることに気づく。いつも暗くなってから会うので、見えなかっただけなのか。いったいいつからのことなのだろうか。見ているようでちゃんと見てなかったことに気付かされた。
やっぱり何かしら体に不調があるのだな。あぁ、一日も早く連れて来て、その不調を治してあげたい。
その気持ちをぐっとこらえて1週間後を待った。

が、しかし、16日から台風が関東にも接近し、大荒れになるという天気予報に変わった。17日まで待てないな。。。
「今夜連れて来よう!」15日の夕方にそう決心し、ごはんをあげる午後8時ごろ、キャリーバッグを持っていつもの駐車場へ向かった。


ミケちゃんは抱き上げても抵抗しないので、すんなりキャリーバッグへは入れられた。
が、その直後、聞いたことのない野獣の様な声を出して叫び続けた。
子どものころに捕獲され病院で避妊手術を受けた時の恐怖がよみがえったのかもしれない。自由に12年過ごしたネコさんが、こんな狭いところに閉じ込められたのだから、怖くてしかたないのだろう。

「ミケちゃん、大丈夫だよ。いっしょにおうちに行こうね。信じて、大丈夫だから」といったことを、私は家に着くまでミケちゃんに語り続けた。


家に着き、ミケちゃんがひとりでいられるように用意した部屋で、キャリーバッグのトビラを開けた。
飛び出したミケちゃんは、すぐに家具の下に隠れる。




「ミケちゃん、大丈夫。信じてね。これからはここでいっしょに暮らそうね。」
そう語りかけて数分後。。。




出てきました。
「ここ、どこ?」





やがてミルクも飲み、安心したのか、眠りはじめる。





ここまで2時間ほど。


ミケちゃん、大物である。
まだまだこれから、大物である場面に出会うことになる。


(つづく)



 
| ミケちゃんが家族になるまで | 15:28 | - | - | pookmark |
ミケちゃん その2
ミケちゃんを家に入れよう、そう決心するべきできごとが起こった。




(2012年11月撮影)

今年のはじめに母が亡くなった。
空き家になった金沢の実家。私はひとりっ子なので、どうするか決めなければならない。
そしていろんなことを考えた末、私たち家族が住むことに決めた。
来年早々に移住する予定だ。

ニヤ、チャイ、コビー、魚たちを連れての大移動になる。
(小鳥レストランもその前に閉店しなければならない。)

そして「さあ、決めるべきときがきましたよ」と頭にすぐ浮かんだことはミケちゃんのことだった。
それが3月末くらいのことだったと思う。


すぐには決心がつかず、ずいぶんと迷った。
ミケちゃんにとって何が一番幸せなのだろうかということを考えた。
私がずっとこの土地に暮らすのなら、ミケちゃんがもっと歳をとり弱ってくるまで、外で見守るつもりだった。そして、具合が悪くなるなど問題が起きたら、私ができる最善の方法をその都度判断して行おうと思っていた。その結果家に入れることになるかどうかも、その時に考えようと。
しかし、私が引っ越し、見ていられなくなったらどうなるだろう。たぶん他にもごはんをもらえる場所はあるだろうから生きていくことはできると思う。でも、病気になり食べることをやめたとき、誰にも知られず、以前のクロスケやチャトラ(ミケちゃんの弟たち)のように、ひっそりと亡くなっていくのだろうか。それはミケちゃんにとっての幸せなのだろうか。
私はミケちゃんを家族にし、守りたいけれど、それはミケちゃんから自由を奪うことになるのかもしれない。
勝手に家の中に連れて行かれ、そのうち雪が降る遠い土地に連れて行かれることは、ミケちゃんは望まないかもしれない。
それらのことをくり返し考えた。気持ちが行ったり来たりした。

「ねえ、ミケちゃん、どっちが幸せ?」
そう猫語で聞けたらどんなにいいかと、何度も思った。




(2013年4月撮影)


そんな迷いを抱えながら、毎晩ミケちゃんにごはんをあげる時に、もしもこの子を家にあげるなら…ということを考えながらしばらく接した。今まで以上に観察をした。
すると、ミケちゃんがいかに年をとり、以前とは違うかがわかってきた。

以前だったら近所でパトロール中のミケちゃんに会うこともあり、私の足音か匂いに気づくと、どこにいても駆け寄ってきたが、そういえば最近はほとんど会わないことに気づいた。
ごはんをあげた後、以前なら私が帰っていく道を追いかけてきて、マンションの裏口のドアを開ける寸前まで「ニャー(かまってかまって!)」とおなかを出してコテンッと寝そべったが、最近はそれがあまりなく、食後に口元を念入りに手で拭ったあとは、ゆっくり歩いて車の下に消えていくのだ。
そっけなくてさみしいなあと思っていたが、なんだか違う。どうもおかしい。
もしかしたら、歳のせいだけでなく、どこか体に不調があるのではないか?という心配が頭をかすめた。

よし、連れて来よう。
もし家に入れたミケちゃんが、とても嫌がり出て行きたそうにしたり、ニヤ、チャイ、コビーがどうしても受け入れられない事態になったら、その時はまたミケちゃんを外に返すという決断をしなくてはならないかもしれない…という覚悟をした上で、そう決めた。
それから、生まれてからずっと13年近く外で暮らしているのだから、猫エイズなどに感染しているいるかも知れない…という可能性についても覚悟をした。


さて、いつ決行しようか。
具体的なことを考え始めたのは、梅雨入りしたころだった。

(つづく)



 
| ミケちゃんが家族になるまで | 22:31 | - | - | pookmark |
ミケちゃん その1
我が家に新入り猫さんが来た。
名前はミケちゃん。この秋で13歳になる。
ニンゲンでいうといま67歳くらいだろうか。




(これはミケちゃんが家に来た次の日。目ヤニと涙がひどい)


私が2003年の春に、このマンションに引っ越してきて間もなく、マンション裏にある駐車場で出会った。
ミケちゃんは生後6〜7ヶ月くらいで、お母さんのサビ猫と、まだ生後2〜3ヶ月の黒猫、茶トラ猫(ミケちゃんの弟たち)といつも一緒にいた。
そのころ我が家には、いまは天国にいるルルさんとポロンがいたので、うちにあるキャットフードを軽い気持ちであげると、次の日もまた次の日も、同じ時間に同じ場所で待っているようになった。
姿勢良くちょこんと座っているミケちゃんの姿はいまでも脳裏によみがえる。
外の猫さんにごはんをあげるということはそういうものなのか…と、一度あげたらずっと責任を持たなければならないんだなと知り、私の外猫さんライフが始まった。
雨の日も、風の日も、今日はこないだろうと思うような台風の日も、ミケちゃん一家は私を待っていた。

しばらくして、近所で外猫さんたちのお世話、避妊手術をしているおばちゃんと出会い、ミケちゃん一家について話を聞いた。
ミケちゃんを避妊手術をするために捕まえて病院に連れて行ったら暴れてたいへんだったこと、それまではおばちゃんの家にごはんを食べに行っていたらしいが、それ以来来なくなった…ということを聞いた。
なので、だいたいのミケちゃんが生まれた時期を知ったのだ。

ミケちゃんの弟のクロスケ(黒猫)とチャトラ(チャイに似た茶トラ)、ミケちゃんはとても仲良く遊んでいた。私とエノコログサ(猫じゃらし)でいっしょに遊んだりもした。
クロスケとチャトラが木登りして降りれなくなったこともあったなあ。
みんなほんとにかわいい子だった。

やがて3匹が母猫と離れる時期が来た。
そしてクロスケとチャトラはその辺りのボス猫から喧嘩をふっかけられるようになった。
外の世界では餌やメス猫をめぐっての縄張り争いがあり、同じ場所にオスは何匹もいられない。弱い子はそこを離れなければならないらしい。
膝に乗ってくるほど甘えん坊で私になついていたクロスケとチャトラは、いつのまにか姿を見せなくなり、少し離れた場所でたまに見かけたが、噂では数年後に2匹とも亡くなったようだ。
あんなになついてくれた子たちをなぜ保護しなかったんだろうかと、いまも後悔している。そのころは、外で幸せそうに暮らしている元気な子はそのまま見守ることがいいと思っていた。
いまでもクロスケとチャトラのことはしょっちゅう思い出し胸が締め付けられる。






出会ってから12年ちょっと。
母猫はいまも元気だが、私の元には来なくなった。別の猫おばさんからごはんをもらっているらしい。
ミケちゃんだけがずっと来続けた。どこか他のお宅でゴハンをもらったんだなあというときも、必ず会いに来てくれた。(おなかはいっぱいであげても食べないのだ)

若い時は高いフェンスをよじ登ったり、一軒家の屋根で昼寝をしていたり、運動神経がよく、気が強いレディーだったミケちゃん。
自分のテリトリーに新入りがやってくると、それがオスであろうと走っていき突き飛ばしていた。
でもボス猫に襲われ、肉がえぐられ膿がでるほどのケガをしていることもあった。
シャベルカーから垂れていた油が背中の毛にベッタリついてしまい、拭いてあげてもとれずに毛を切ってあげたことも。











思い出は、飼い猫と同じくらい、もしかしたらそれ以上たくさんあるかもしれない。
でも女王ルルさんがいた我が家には、もうひとり女王を入れるわけにはいかないので、ミケちゃんは外で見守る子…と自分に言い聞かせ、情が移りすぎないように心の中に壁を作っていた。

でも昨年の春ルルさんが旅立ったからといって、じゃあミケちゃんを…とは思えず、きっといつか「いまだ」と直感する日が来るだろうと思い、毎日ミケちゃんを見守って来た。

「いまだ」… それがいまだった。



(つづく)



 
| ミケちゃんが家族になるまで | 09:48 | - | - | pookmark |
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